幸せな家族
本当に電車の中は面白い！
向かい側に座っている若い夫婦と小さな娘ちゃん。
身に着けている服は決して高価な物でも普通の物でもなく、少し着古したであろうと思われる装いでした。
私は、化粧っ気のない母が娘を愛おしむ姿に圧倒され、その横で妻子を見守る父に感動し、ずっと見ていたいと思いました。
夫妻が何気に言葉を交わす時には、お互いに優しい眼差しを向け合い微笑み合い、全てが満たされているようなそんな風景を見せてくれたのでした。
やがて人は入れ替わり、高齢の女性が私の隣に座りました。
女性は、岩崎ちひろさんの絵本に出てきそうな、つぶらな目をしたその娘ちゃんに「可愛いわね」と言ってお菓子を二つ三つ渡しました。母親は最高の笑顔を向けて「ありがとうございます」とお礼の言葉を口にしました。父親も微笑みます。
全てが途切れることなく自然に流れていて、懐かしさを感じる空間でした。
この３０分ほどの時間の中で、私がとった不可思議な行動・・・。
女性がお菓子を手渡した時に、あるはずもないお菓子を探した私がいたのです。
自分の手提げ袋の中を覗いて手を入れたのです。
この咄嗟の行動は、私の記憶の中にある母の行動だということは直ぐにわかりました。母も外出時には必ずチョコレートや飴、ちょっとしたお菓子をバッグに忍ばせていたからです。ここに母がいたなら、きっと「可愛いわね」と言って
バッグから取り出したお菓子を手渡したことでしょう。
言葉では言い表せない懐かしさ。
１２番目の月を迎え、フ～っと安堵のため息をついています。
この１年、皆様には大変お世話になりました。ありがとうございます。
どうぞ、良いお年をお迎えください。
祈りと喜びと感謝とともに・・・市川美紀子